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2026-08-30 · 図解

2.8兆パラメータが、無料で落ちてくる

Kimi K3の重みファイルは、誰でもダウンロードできます(Hugging Face・ゲートなし・約1.56TB)。サイズは2.8兆パラメータ — 公開されている中で史上最大です。DeepSeek V4は1.6兆、GLM-5は7,440億。「オープン=小さくて安いが弱い」という前提は、もう成り立ちません。どれくらいの巨体が、どれくらいの値段で、どこまでGPTやClaudeに迫っているのか。3つの図にしました。

🎙 60秒の音声版(KOEの声クローンで生成):

図1: 大きさ — オープンモデルの巨大化

総パラメータ数(面積比) と 実際に働く部分(内円・MoE) Kimi K3 2.8T 総 / 104B 稼働 DeepSeek V4 1.6T / 49B GLM-5 744B / 40B Qwen3.5 397B / 17B ? GPT / Claude 非公開 総パラメータ(保存サイズ) 1トークンあたり実際に動く部分(MoE) クローズド(規模非公開)
面積=総パラメータ数。全部MoE(Mixture of Experts)なので、1トークンごとに動くのは内側の濃い円だけ — 2.8兆を保存し、104Bぶんの計算で答える。これが「巨大なのに安い」の種明かしです。出典: 各社公式リリース(2026)。

図1b: 見えない相手の大きさを「予想」する

クローズドの規模は非公開 — でも、外から推定する方法はあります。主なやり方は2つ。推論の経済からの逆算(応答速度・消費電力・提供コストは、動かしているパラメータ数に物理的に縛られる)と、2026年4月に出た知識容量プローブ(IKP)(事実知識は圧縮できないので、「何を知っているか」を1,400問で測ればサイズが逆算できる。既知の89モデルで較正、R²=0.917、誤差中央値1.59倍)。ただし較正に使えた公開モデルは最大1.6Tなので、それより上の推定は外挿で、誤差はさらに大きくなります。ここからの数字はすべて推定と予想で、公式値ではありません。

総パラメータ数 — 公式値(●) と 外部推定(帯=90%区間) と 予想(◆) 0.3T1T3T10T30T 総パラメータ(対数軸・T=兆) Qwen3.5 397B(公式) GLM-5 744B(公式) DeepSeek V4 1.6T(公式) Kimi K3 2.8T(公式) — ここから下は外部推定・予想(公式発表なし) — GPT-5 / Opus 4.7 / Grok 4 3.2〜4.1T帯に密集(IKP) Claude Opus 4.6 ~5.3T(IKP) GPT-5.5 ~9.7T(IKP/推論経済とも一致) Claude Mythos ~10T(リーク報道・未確認) K3×8≈22T(当社予想) 公式値 外部推定(90%区間) 当社の大胆予想
推定はIKP論文(arXiv:2604.24827・2026-04)の点推定と90%区間。Mythosの~10Tは2026年3月末の内部文書流出に基づく報道値(RanketAIほか)でAnthropic未確認。◆は当社の予想であり、いずれも公式発表ではありません。なおIKP推定には強い反論もあり、採点方法と問題の曖昧さを修正するとGPT-5.5 ~1.5T / Opus 4.7 ~1.1Tまで下がる — つまり実際はもっと小さい可能性すらある。また外部推定があるのは一世代前(GPT-5.5/Opus 4.6-4.7)までで、最新世代(GPT-5.6/Sonnet 5)の推定はまだ世に無い。

大胆予想: 「桁違いの巨大モデル」は、たぶんどこにも無い

ここからは当社(というより筆者)の予想です。クローズド勢が隠し持つモデルは、オープン最大のK3から見て1桁以内 — 「100兆パラメータの秘密兵器」は存在しないと見ています。根拠は3つ。

では「本当に大きいの」はいつ出てくるか — これも予想しておきます。フロンティアの1世代は、事前学習4〜6ヶ月 → 強化学習・調整3〜6ヶ月 → 安全評価と提供準備3〜6ヶ月で、発表間隔はだいたい18〜24ヶ月です。Mythosの調整が2026年前半に終わったとすると、次の「ひと回り大きい」の事前学習は次世代ハード(Stargate級の1GWデータセンター+新世代GPU)が立ち上がる2027年に回り、世に出るのは2027年末〜2028年前半と読みます。ただしサイズは跳ねない: 計算を10倍にしても、学習則(計算最適のバランス)ではパラメータは3倍前後にしか増やさないのが合理的で、しかも高品質データの枯渇がそれを後押しする。つまり次は10〜30T級、100T級は2020年代には来ない — というのがこのページの追加予想です。

「機械がハードを作る」ようになったら、どれだけ早まるか。いまの律速はハードウェアです: チップの世代交代18〜24ヶ月、先端ファブの建設3〜5年(1棟2〜3兆円)、データセンター建設と送電網接続2〜4年、そして学習の実行4〜6ヶ月。このうちAIとロボットで縮むのは、まず設計 — チップの配置設計はすでにAIがやっていて(GoogleはTPUの設計にAlphaChipを実使用)、検証支援も含めて設計工程で3〜6ヶ月縮む。ファブの中身はすでにほぼ無人です。縮まないのは、EUV露光装置(数千社のサプライチェーンと職人的な組立)、建屋、そして電力インフラ — 変圧器・タービン・送電線のリードタイムは3〜5年で、これはロボットが現場に入っても物流と規制が律速。全部うまく効いても、世代間隔は18〜24ヶ月→10〜12ヶ月、つまり加速はせいぜい2倍で、桁では縮まないと見ます。上の「2027年末〜28年前半」予想も、機械がハードを作る未来を織り込んで前倒しできるのは1〜2四半期分。むしろ加速が速いのはソフト側(合成データ・アルゴリズム改善)です。

この見立てだと、リーク報道の~10T(K3の約3.6倍)から当社予想の上限~22T(K3の約8倍)まで幅を取っても、オープンとクローズドの差は1桁以内(数倍)。重みが落ちてくる側が兆単位に到達した今、規模の壁はほぼ消えたことになります。外れたら、このページで訂正します。

この予想への賛否 — 世の中の意見

都合のいい話だけ並べてもフェアではないので、この予想を支える意見崩す意見を両方置いておきます。

🟢 支える意見🔴 崩す意見
Epoch AI: フロンティアは一度GPT-4(~1.8T)より小さくなった(GPT-4o≈1/8前後)。推論経済がサイズを抑える実績 計算基盤は現に桁上げ中 — Stargate Abilene単体で1.2GW・GB200を45万基規模(2026年央)。「10倍の事前学習」を回す箱は物理的に建ちつつある
LessWrongのIKP再検証: 採点補正後はGPT-5.5 ~1.5T / Opus 4.7 ~1.1T — クローズドがK3(2.8T)より小さい可能性すら示唆 「スケーリングの壁は蜃気楼だった」派: 2025年の停滞は一時的な踊り場で、事前学習はまだ成長エンジンという反論も現役
収穫逓減+データの壁: 高品質な公開テキストは2026〜28年に枯渇見込みで、事前学習コンピュートを倍にしても最難問の改善は1〜2割という分析。各社の投資は推論時計算(reasoning)へ移行中 リーク値そのものが反証: Mythos ~10T報道が正しければK3の3.6倍で、「並んだ」と言うにはまだ差がある。IKPの原推定(GPT-5.5 ~9.7T)も同方向

出典: Transformer News「本当に大きいモデルはどこへ行った?」 / OpenAI Stargate発表 / スケーリング則の収穫逓減分析。どちらの陣営が正しいかは、次のフロンティア発表とその提供価格が教えてくれます。

図2: 派生のしくみ — 「安いモデル」はどう作られるか

「Flash Lite は 3.0 を量子化してファインチューンしたもの?」と思われがちですが、実際は3つの別の軸が組み合わさっています。同じ家系(例: 画像のGemini 3系)で見ると:

同じ家系の中の3つの軸(例: Gemini 3 画像系・単価はOpenRouter実測) ① 小型設計・蒸留 — 小さい兄弟を作る(別の重み) 3 Pro $120/M 3.1 Flash $60/M Flash Lite $30/M ② 量子化 — 同じ重みのビットを削る FP16(16bit) MXFP4(4bit) Kimi K3は最初から4bit(MXFP4)で配布。 2.8兆を現実的なGPUに載せられる理由。 ③ ファインチューン — 用途に寄せる(賢さの軸ではなく向きの軸) コード特化・日本語特化・審査特化など。①②とは独立に、どのモデルにもかけられる。 つまり「Flash Lite=Proの量子化」ではなく、小さく設計し直した別の重み。量子化はそれをさらに軽く運ぶ包み方。
①が価格差の主因(小さい=速い=安い)。②は配布と推論を軽くする(精度の削りしろは年々うまくなっている)。③は方向づけ。3つは掛け算で効きます。

図3: どこまで迫ったか — 賢さ×価格(実測)

日本語148問ベンチ(自社実測) × 出力単価(ライブ・対数軸) 86% 88% 90% 92% 94% $1$2$5$15 出力 100万トークンあたり(対数) GPT-5.6 sol 94% Claude Sonnet 5 94%※ Kimi K3 92% DeepSeek V4 Pro 89% ($1.98) GLM-5.2 88% ($0.97) Qwen3.5-397B 87% ($2.34) トップと2〜7点差 · 価格は1/6〜1/15 オープンウェイト(重み公開) クローズド
スコア=当社jp148-bench(日本の実務148問・2026-07-31実測、方法と全15モデルの結果)。※Claude系は採点judgeが同族のためスコアを割り引いて見てください。単価=/modelsのライブ値(2026-08-30取得)。

数字で見る(表)

モデル総パラメータ稼働(MoE)重み日本語148問出力単価
GPT-5.6 sol非公開非公開94%$15.0/M
Claude Sonnet 5非公開非公開94%※$15.0/M
Kimi K32.8T104B公開(改変MIT・MXFP4)92%$15.0/M
DeepSeek V4 Pro1.6T49B公開89%$1.98/M
GLM-5.2744B40B公開(MIT)88%$0.968/M
Qwen3.5-397B397B17B公開87%$2.34/M

パラメータ数は各社公式発表(2026)。Qwenは別途「Max」系(1兆級)をAPI提供していますが重みは非公開のため表はオープン版397Bを記載。単価は当社ゲートウェイのライブ値(市場建値連動・6時間毎改定)。

まとめ

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